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出典『江戸買物独案内』飲食の部
財団法人味の素食の文化センター所蔵
 江戸後期の文政7年(1824)に出版された『江戸買物独(ひとり)案内』は、江戸に不慣れな人でも独りで買物が出来るように、商店の屋号や所在地を業種別にまとめ、いろは順に掲載した案内書です。
 
 この本は上巻、下巻、飲食の部から成り、飲食の部の目録には、「御料理・七色茶漬・あわ雪・女川なめし・御膳蕎麦・うなぎ蒲焼・すし・餅しるこ」の業種があります。
 上の図はすし屋の一部ですが、店によって大きさが違うのは、出資した広告料の多少によるもののようです。また著名な店でも掲載していないものもあります。
 図の上左に“いさごすし 一銘松すし”とあるのは、NO.21で紹介した深川六軒堀の“松のすし”です。この店のすしは高価なことで知られ、柳多留に「おはしたの口へはいらぬ松の鮓」の句があります。なお、おはしたは下働きの人のことです。
 一説に、当時向島に幕府の権力者の邸があり、そこへのご機嫌伺いの人々が、道筋にあった“松のすし”のすしを手土産に買ったため、ぜいたくで高価なすしになったともいわれています。
 上野広小路東側の翁屋は“翁ずし”として知られ、柳多留に「おみやげと竹の皮とる翁ずし」の句があります。本石町通十軒店の翁屋は“玉ずし”と呼ばれ、すしの翁屋は江戸に数軒あったようです。
 江戸の地図を見ながら、『江戸買物独案内』のすし屋を探してみるもの、おもしろいのではないでしょうか
注) 柳多留はNO.12に注があります。
 監修・著 松下幸子千葉大学名誉教授
>>松下教授プロフィール
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