この絵では屋形船での飲食の様子はわかりませんが、元禄9年(1696)刊の井原西鶴の『万の文反古(よろずのふみほうぐ)』の中の「来たる十九日(6月)の栄耀(えよう)献立」の章に、川遊びの屋形船での饗応の献立があります。江戸ではなく大坂での話ですが、おもな料理名だけあげてみると「大汁(雑魚)、杉焼(鯛と青鷺)、煮さまし(筍)、和え物(さき海老・青豆)、吸物(鱸の雲わた)、引肴(小鯵の塩煮)、田楽(たいらぎ)、吸物(燕巣(えんす)ときんかん麸)、後段に白玉のひやし餅、吸物(きすの細作り)、早鮨、真桑瓜、お茶」とあり、元禄時代の大坂の商人のぜいたくな屋形船での饗応の例として知られています。挿絵を見ると料理をする船は傍らに別にあり、行水のための湯殿のある船も用意されていたようです。
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