四季で楽しむ江戸グルメ

更新日:2024.07.25

東京名物・橋善の天ぷら

江戸から明治に時代が変わると、天ぷらの世界にも大きな変化がみられた。江戸っ子は、屋台で天ぷらを食べていたが、明治になると天ぷら店が生まれた。

天ぷら店が誕生すると、その数は増えていき、明治18年(1885)には、35店の天ぷら店の名がみられるようになり、その中に「しば口 橋善」の名がある。橋善は、銀座通りを南下し、新橋(橋の名)を渡るとすぐのところにあった。店内のようすは、明治38年5月発行の『月刊食道楽』に、

座ると女中が「御飯でいらつしやいますか、御酒でいらつしやいますか」と訊ねる。定価表を一覧すると、天麩羅上廿銭・並十三銭、天丼も同じく。御飯四銭、新づけ一銭、酒が八銭、麦酒(びーる)もある。他に刺身と酢の物が出来る、これが十銭づゝだが、定価表の終りに、妙な断り書きがしてあり、「御酒は一人様四合限りにて御断り申上げ候」と書かれている。天麩羅はさらりとした揚げ方で、種もなかなか宜い。

と紹介されている。

酒を飲む量を制限する営業方針は、当時の人には奇妙に思えたようだが、天ぷらのほかに酒と刺身や酢の物を出して、酒飲み客を取り込みながらも、飲む酒の量を制限して、客の回転をよくし、多くの人に売り物の天ぷらや天丼を味わってもらうアイデア商法である。それにしても、四合も飲めればかなりの量だ。酔っ払って長居をした人もいたのではなかろうか。

橋善では、吟味した魚介類を天ダネに使い、衣が厚くて大きな天ぷらを揚げていたが、これを大盛りのご飯の上に載せた「親子二人で食べられる程」の天丼が人気メニューになっていった。東京名物の食べ物をランク付けした大正12年(1923)刊の「東京名代食物番付」では「小結 新橋橋善 天丼」と、橋善の天丼が小結にランキングされている。橋善は天ぷらの名店として名を馳せていたが、惜しくも平成14年(2002)に閉店してしまった。

監修・著飯野亮一
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