建替え現場から
大間を飾る手刺し緞通(だんつう)
お客様を祝祭空間に誘う新しい歌舞伎座の大間に色鮮やかな緞通(だんつう)が敷き込まれました。
屋内で使われる床敷用の高級織物「緞通」。今回敷き込まれたのはロビーの中央にあたる部分、縦7.8m、横12.3m、重さはなんと約500kg!厚みが15mmもあるのですからその重さにも納得です。
端部を丁寧に調整しながら敷き込みます
色鮮やかなこの図柄は京都・平等院鳳凰堂中堂母屋の方立に描かれている菱形文様をモチーフにしたもの。描かれている4羽の鳥は「咋鳥(さくちょう)」と呼ばれ、花枝を加え幸せを結縁するといわれています。昭和26年の第四期歌舞伎座開場当時には、この文様を3ヶ所に使っていましたが、今回は細部をさらに復元、サイズを大きくして、1ヶ所に用いることにしました。
今回使われたとりどりの羊毛(左)、手刺し作業の様子(右) 写真:吉川忠久
22種類以上の色糸を組み合わせることでできる絶妙なグラデーション。
色染めされた羊毛を、一本一本職人が「手刺し」することで、深い味わいを生んでいます。
毛足の長い緞通は、密度が詰まっているので踏みごたえもあり、また、踏まれることで深い味わいが出てきます。新しい歌舞伎座はお客様がご来場されることで、さらに美しい建物に進化していくことでしょう。
2013年2月12日