建替え現場から
釘隠し 製作中!
破風屋根や欄干、プロセニアムアーチ、扉などに、形や種類の異なる多くの金属製の装飾品がついていた第四期歌舞伎座。
「錺金物(かざりかなもの)」と呼ばれる細工で建造物を飾ることは、平安時代以前から伝統的に行われていましたが、現代では、城や格式の高い屋敷、社寺仏閣、神輿や仏具・神具の装飾などで目にするくらいでしょうか。
錺には、鋳物によるもの、銅板を彫金し叩き出すものなどがありますが、今回は、その中でも、鋳物による"釘隠し" (釘の頭を隠すための錺金物)の製作のようすについて取り上げます。
上の写真のように、歌舞伎座で使われる"釘隠し"だけでも様々な形や大きさのものがあります。
手前と奥の錺は、6枚の葉を模様化した「六葉(ろくよう)」、真ん中に並ぶ丸い錺は「唄(ばい)」と呼ばれる釘隠しです。
第四期の建物で使われていた釘隠しは、すべて職人手作りの特注品。
外壁に58個、劇場内部で207個も使われ、さり気なく「歌舞伎座」の個性を演出していました。
補修し再利用するものもありますが、新調される釘隠しも元のデザインを踏襲。
現在、鋳物づくりで900年以上の歴史をもつ山形市鋳物町の鋳造現場で製作されています。
製作に入る前には、色や艶の出し方、傷がついた場合の補修方法にいたるまで何度も検討を重ね、その都度、試作品が作られてきました。
この釘隠し一つをとっても、職人たちの卓越した技が形となってあらわれています。
新劇場を訪れるときは、このような隠れた美術品にも注目してください。
< 撮影 / 吉川忠久 >
2012年7月2日