建替え現場から
制振・耐震を支える構造
万一の災害や地震。 これに備え、高層ビルと一体の新しい歌舞伎座も、最新の建築技術を随所に取り入れています。 |
| 特に地震対策は誰もが気になるところですが、建築においては、主に「耐震」「免震」「制振(制震)」の3種類に分けられます。 簡単に説明すると、「耐震」は建物そのものを丈夫にして倒壊しないようにすること。 「免震」は、建物と地盤の間に装置を組み込み、建物に振動が伝わらないようにする方法。 「制振(制震)」は、建物の中に設置した装置により建物の揺れを抑える方法で、地震のほかに強風時の揺れも考慮しています。 以前ご紹介したメガトラスも、その上に乗る高層ビルを安全に支えるための構造体で、耐震の重要な役割を担っていますが、特に今回の建物は、地震による揺れを軽減する“制振”を重視した設計となっています。 |
このような制振、耐震の技術が施された装置は、建物が完成すれば壁などで隠れてしまいますが、建築中の今、現場で間近に目にすることができます! |
左の写真、斜めに設置されているのが「オイルダンパー」。 オフィスビル各階のコア部分に設置されています。 中に入っているオイルの粘りを利用して建物の揺れを抑え、安全性と居住性を高める油圧式制震装置です。 |
こちらにも斜めの鉄骨が見られますが、これは「アンボンドブレース」という制振装置かつ耐震部材。 中心鋼材とコンクリートの間に特殊な緩衝材(=アンボンド材)が入っていて、地震時には、この緩衝材が動くことによって地震力を逃し、まわりのコンクリートによって部材自体が壊れることを防ぎます。 写真のように筋交いに設置することで、建物の耐震性をアップさせます。 |
広いオフィスの窓に沿って並んでいるのはCFT(Concrete Filled Steel Tube)柱。 CFT柱とは、鋼管柱の中に高強度コンクリートを充填したもので、圧縮に強いコンクリートと引張りに強い鉄骨の長所を組み合わせたハイブリッド柱です。 従来工法の柱よりも高耐力で、変形性能、耐火等に優れ、一段と高い耐震性能を発揮します。 上の右の写真のように、タワークレーンでコンクリートホッパー(コンクリートを運搬するための容器)を吊り上げ、柱の中に高強度コンクリートを充填していきます。 |
◇
現場に入ってみると、巨大な劇場空間とそれを取り囲むさまざまな柱や鉄骨に圧倒されますが、また同時に、先進の制振装置と高い耐震性能に「守られている」とも実感! 安心することができました。 |
2012年4月20日