建替え現場から
歌舞伎座の音づくり
第五期歌舞伎座の音響は、サントリーホールや大阪新歌舞伎座をはじめ、国内外の数多くのコンサートホール等の音響設計を手がけた株式会社永田音響設計が担当。 基本設計の段階から、劇場の音響はもとより、騒音・振動の低減にかかわることまで、音響設計コンサルティングをお願いしています。 |
音響実験用の模型(大谷社長)
従来の歌舞伎座は音環境にすぐれ、せりふや演奏の音がよく聴こえると評判でした。 実際、3階席や4階席でも、まるで音が上から降ってくるように聴こえていました。 マイクに頼ることなく、生の音が客席全体に心地よく響いていたのは、もちろん俳優さん達の修練の賜物でもありますが、天井やバルコニーの形状、それぞれの材質、空間の広さ・・・ すべてのものが相まって完成していた音響でした。 そんな第四期歌舞伎座ならではの音響を再現できるように、閉館前から場内で様々な調査を行ない、清水建設株式会社 技術研究所で製作された1/10縮尺模型で、繰り返し音響実験を実施してきました。 |
満員御礼!・・・を想定しての実験 花道や桟敷席、天井や廻り舞台もちゃんとあります!
人形には、服と髪の部分にフェルトを着けるなどの細工も。 人間の身体の吸音率と同じにするために、中心部を空洞にしています! |
1/10模型実験で使用する音は10倍の周波数(非常に高い音)。 そのため、模型の壁・床・天井などの材質は、実際の劇場と同じような音響性能が得られるような仕様になっています。 そして、壁材を着脱したり、天井の反射板の角度を調整したりしながら、実際に音を出して様々なシミュレーションを繰り返してきました。 |
客席内の音を確認しています 反射板が設置された特別な実験室
一方で劇場は、いい音で響くような状態になるまで、木とコンクリートが乾燥する時間が必要で、しっくり落ち着くまでに約20年かかるともいわれます。 技術だけではなく時間も、音響にとって大切な要素のひとつ。 新しい歌舞伎座も、お客様と一緒に時間を積み重ねていくことで、更にすばらしい劇場に仕上がっていくことでしょう。 |
2012年3月9日