建替え現場から
第五期歌舞伎座 施工会社の紹介
“伝統と創造の融合”をテーマに、最新の機能や都市基盤の整備等を目指す第五期歌舞伎座。以前紹介した強力な設計陣によって描かれた設計図や意匠図面を形にしていくのが施工会社、今回はその重責を担う施工担当『清水建設株式会社』をご紹介します。
清水建設株式会社の創業は、文化元年(1804年)清水喜助氏が神田鍛冶町で始めた大工業にさかのぼるとされ、実に200年以上の歴史を持つ日本有数の建設会社。歌舞伎座との関わりも深く、戦後の混乱期に物資が希少だった中、昭和25年に竣工した第四期歌舞伎座の復興も同社の尽力なくしては語れません。
<第四期歌舞伎座 復興時の様子>
皆様に惜しまれつつ60余年の歴史に幕を閉じた第四期歌舞伎座。その間お客様に安全且つ快適な環境を提供できた背景には、同社の365日24時間体制という強力なサポートがあったから。建物の構造や材質、瓦の種類までも熟知し、電気・衛生といった設備はもちろん、舞台機構や照明・音響に至るまで、いつどんな内容の修繕を行ってきたかを把握した係員が常駐。劇場の隅々までメンテナンスの目を光らせ、トラブルが発生してもその日のうちに対処し、翌日にはいつもどおりお客様をお迎えする・・・そのあたりまえに見える日常を、華やかな舞台の裏方の裏方に徹して支えてくださった同社。
その清水建設株式会社の特色として挙げられるのが、“木材”に対するこだわり。同社の設計本部には社寺仏閣の新築はもちろん保全・修復も手掛ける社寺設計部、現業としては社寺・住宅部という専門部署があり、伊勢神宮外宮神楽殿や首里城正殿の新築、東大寺大仏殿、浅草寺本堂や国宝大崎八幡宮の修復など、様々な伝統施設を手掛けてきました。
また、江戸時代に創業した同社は、昔ながらの日本の木造文化を、同業他社にはない「自社の木工場」という形で残し、自ら木材を調達・加工し、伝統建築や内装木工事のニーズに応えています。
第五期歌舞伎座は、現代建築の先端技術によって多様な材質を組み合わせて和風の建物を造る「近代和風建築」、外観意匠の継承にも同社の技術が存分に活かされることでしょう。
同社の木工場には、第四期歌舞伎座から保存のために採取した部材も保管されていて、次の舞台に活かされることを待っています。