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『市村座大入あたり振舞楽屋の図』財団法人 味の素食の文化センター所蔵
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  「市村座大入あたり振舞(ふるまい)楽屋の図」は市村座楽屋の三階での光景です。あたり振舞は芝居が当って利益が多かった時に、興行元が役者や関係者を招待して行う慰労の宴会のことです。
 3枚の絵の左図には、吸物椀を15個のせた大盆を運ぶ男たちが見えます。図中の役者には名前が書いてありますが、判読しにくいものもあり、中央図の丸盆に料理の器をのせて運んで来た役者は誰でしょうか。
 中央の大きな膳には、刺身らしい大皿、中身はわかりませんが煮物を入れたらしい深鉢と、和え物かと思われる浅鉢があり、その向うの蓋付きの器はなべ料理でしょうか。膳の向うにもう一つ小さい膳があり、上にのっているのは香の物の器かも知れません。
 中央図には酒を注いでいる坂東大吉、盃を持っているのは市川団十郎のようですが名前がよく見えません。その向うには女形が2人いて、座っているのが市川団之助、立っているのが沢村田之助とあります。
 芝居の衣裳のままの人や、化粧落としをしている人などもいて、30人余りが見え、宴会はこれから始まるところのようです。
 この絵は役者の顔ぶれや、衣裳その他から見て、文化8年(1811)の顔見世興行(11月)の時のものといわれています


注)
江戸時代の芝居小屋の楽屋は三階までありましたが、三階建ては幕府の許可が得られなかったので、表向きは二階を中二階、三階を本二階と呼んでいました。役者の居場所は階級によってきまっており、一階の楽屋口近くにある稲荷大明神をまつる稲荷町とよばれる場所には下級の立役(たちやく・男役)、二階は女形(おんながた)の居場所でした。三階には中級の立役の大部屋と上級の立役の部室、座頭の部屋があり、大部屋は稽古や集会にも使われました。
 監修・著 松下幸子千葉大学名誉教授
>>松下教授プロフィール


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