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芝居茶屋が見物客の飲食物を扱っていた江戸時代とは違い、現在の劇場には食堂や売店があって、観劇の食習慣は大きく変わりましたが、平成10年7月に歌舞伎座では江戸時代の芝居見物を再現する試みを行いました。
7月は猿之助の「義経千本桜」が昼と夜に通しで上演されましたが、特に19日は「“千本桜”を通しで見る日」として、昼の部と夜の部を続けて見る観劇日でした。
これは江戸時代の1日がかりだった芝居見物を再現したもので、食事も菓子、弁当、すしをセットにして「江戸風芝居かべす」として、予約販売されました。“かべす”は前回のNO.5で説明しましたが、菓子のか、弁当のべ、すしのすと、三つの頭文字からの名です。
『守貞漫稿(もりさだまんこう)』に記載の幕の内弁当は、十個の握り飯が主食で、おかずは卵焼・蒲鉾と、煮物の蒟蒻・焼豆腐、里芋、干瓢でしたが、試作してみると現在の私たちにはものたりない内容でしたので、江戸風の季節料理を取り合わせて、写真のような幕の内弁当を作りました。
すしは押ずしと巻物ずしの詰め合わせで、菓子は江戸時代からの老舗の菓子、長命寺の桜餅と根岸の羽二重団子の2種類でした。
限定300人分の販売でしたが、大層な人気で買えなかった人も多かったようです。
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