「食事は客の好みや座席の等級によって一定ではないが、大体は席に着くとまず煙草、茶、番付が届けられる。次に菓子、次に口取(くちとり)や刺身など、次に煮物、次に中飯、次にすし、終わりに水菓子が通例である。中飯は江戸では幕の内と呼び、円扁平の握り飯をわずかに焼いたもの十個に、卵焼と蒲鉾と、蒟蒻(こんにゃく)・焼豆腐・里芋・干瓢の煮物を添え、六寸重箱(約18cm角)に入れて、人数に応じて見物席に運んで来る。これは茶屋で作るが、芳町にある萬久という店で、笹折に入れて、一人分百文で売っているものを、茶屋で重箱に詰めて客に出すこともある。」
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