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『宴遊日記別録』による再現料理
【夕餉 】
茶飯、汁(海老・菜・うど)、鱠(ぼら・くらげ・せり)、焼物(蒸かれい)、のっぺい(肉、鮑、長芋)、浸物(ほうれん草)
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調理は歌舞伎座紺野料理長
【朝】
茶漬、今出川豆腐、漬物
【夜餉】
福山ぶっかけ(薬味は大根おろし・鰹節・唐辛子)、
煮物(麸・肉・せり)
 
 前夜は雷や大風で荒れ模様の天候でしたが、夜明には雲もなくなったので、6時ごろ柳沢信鴻は中村座へ芝居見物に出かけました。この日はお隆も一緒で供は20人ほど、現在の六義園にあった屋敷から本郷通りを通って、堺町(現在の人形町辺)へ行きます。まず芝居茶屋の松屋で朝餉の茶漬を食べ、中村座で二幕目から見物しています。
 芝居の表題は「御誂染曽我雛形」で、信鴻は下手ばかりで退屈と批評しています。幕間に松屋で夕餉をとり、暮前に芝居が終わってからまた松屋で夜餉をとっています。
 午後6時過ぎに帰途につきますが悪天候で北風が強く、土砂が眼に入って難渋し、加賀屋敷前(現在の東大前)の居酒屋越後屋に入って休みます。酒や茶を飲み火にあたってようやく人心地がつき、午後8時過ぎに屋敷に帰り着きました。
 この日は嘉藤次より鹿子餅の折詰、松屋から羊羹・外郎(ういろう)・饅頭、永楽屋からも餅菓子と、各種の菓子を貰っています。外郎は米粉に砂糖を加えて水で練り、枠に入れて蒸したもので、現在も小田原の名物になっています。
 
注)
* 今出川は今出川豆腐のことで焼豆腐に醤油味のだし汁を加え、弱火でよく煮たもの。京都今出川に住んでいた菊亭前大納言の命名といわれています。
* ぶっかけは、かけそばのこと。
 監修・著 松下幸子千葉大学名誉教授
>>松下教授プロフィール
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