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弥生花くらべ
歌川豊国(三代)画 国立国会図書館所蔵
 
 上の「弥生花くらべ」の錦絵では、左側の女性は熨斗(のし)の付いた到来物らしい白酒を持っており、絵には見えませんが、後の緋毛氈(ひもうせん)の奥には雛壇があるようです。
 中央の女性の傍の膳には酒器や酒肴が見えますが、当時の雛祭の料理はどのようなものだったのでしょうか。もう雛祭は過ぎましたが、旧暦の3月3日は、今年は4月11日に当たります。
 
 天保7年(1836)刊の『日用惣菜俎(にちようそうざいまないた)』には、雛祭の献立が次のように書かれています。
たんざくうど 浅草のり
平(煮物) かんぴゃう 大椎茸 くわい はすの根 あわび
あさつき あさりむきみ とうがらしみそあえ
皿(焼物) ひらめ切身 新せうが
猪口 枸杞(くこ)の芽浸し けしふりかけて 小豆めし
香の物 三月大根新づけ
重詰
初重五色 梅花玉子 あわび 花えび よせ豆腐 しぎいも
二重七色 ねぢ梅くわい 火どり長芋 かうたけ わらび 百合根 きゃらぶき 
すだれ麸けしふりて
三重五色 わかさぎつけ焼 木の葉かれい ひいか芝煮 とこぶし貝共 小さざい同じく
 この献立は随分ぜいたくなもので、『馬琴日記』によると、流行作家滝沢馬琴家では、天保5年(1834)3月3日には、昼食に赤飯と一汁二菜で雛祭を祝っています。
 また、江戸の鰹節商「にんべん」の「家内年中行事」の記録には文化12年(1815)3月3日には「夜分見世奥白酒を出す。重詰 煮染 菜三つ葉の類、はりはり。昼飯 あさつき むきみ」とあります。
 監修・著 松下幸子千葉大学名誉教授
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