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寺子屋書初
歌川豊国(初代)画 文化1年(1804) 国立国会図書館所蔵
 
 寺子屋といえば「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」四段目の寺子屋の段を連想しますが、上の絵は見立寺子屋で派手な女性たちが描かれており、中央奥の右手に筆をもつ男性が師匠のようです。
 寺子屋は江戸時代に普及した庶民の子供を対象にした民間の教育機関で、おもに読み・書き・そろばんを教え、手習い所ともよばれていました。寺子屋は室町後期に寺で始まったもので、生徒を寺子とよんだので寺子屋の名があるといいます。
 
 書初(かきぞめ)は正月2日に、その年の書き初めを祝う行事で、寺子屋の普及とともに一般化したといわれています。
 左端の衝立
(ついたて)の上部中央には、『古今和歌集』の古歌に始まり、江戸時代には琵琶歌、浄瑠璃、常磐津などにも歌われ、現在は国歌となっている君が代が書かれています。
 絵の右側には新しく寺子屋入りをしたらしい女児と母親がおり、女児の左側にある西村と書かれた黒い箱は、菓子屋が得意先に菓子を届けるのに使う通箱(かよいばこ)のように見えますがよくわかりません。
 この母子の向うには、盃を持つ女性と、銚子から酒をつぐ女性がいます。正月のことなので酒は屠蘇
(とそ)でしょうか。
 正月に屠蘇を飲むことは平安時代に中国から伝えられ、病除けの風習として江戸時代には広く行われていました。
 監修・著 松下幸子千葉大学名誉教授
>>松下教授プロフィール
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