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会席の図(団扇絵)
国立国会図書館所蔵
絵師は香蝶戯画とあるので、歌川国貞(香蝶楼)と考えられます。 
 
 今年は6月から暑い日が多く、真夏が思いやられます。江戸の天候は記録によると、冬の酷寒の例はかなりあっても、夏の酷暑の例は比較的少なく、現在にくらべて過しやすかったようです。
 
また、江戸の面積のおよそ6割が武家地、2割が寺社地、庶民の住む町地は2割で、武家地の大名屋敷の多くは、後楽園や六義園のような広大な庭園を持っていたので、江戸は緑の豊かな庭園都市だったともいわれています。
 
 このように、天候や自然に恵まれ、人工的な冷房などなかった江戸の夏に、人々はいろいろな納涼を楽しんでいました。
 上の絵は水の上に張り出した座敷での酒宴で、肩ぬぎの人や、団扇や扇子を使う人もいますが、まわりは一面の田んぼで、吹いてくる涼風が感じられます。
 絵の中に「田中庵 奥の亭より杜若(かきつばた)別荘を見る図」と書かれていますが、評判記や料理屋番付などで調べても、田中庵は見つかりませんでした。
 『江戸名所花暦』(1827)には、杜若の名所として、隅田川東岸の三囲稲荷
(みめぐりいなり)社地を第一にあげており、小梅村の田の中にあるとしていますから、或いはそのあたりの料理屋かも知しれません。
 宴席の中央に大皿と大鉢に盛った料理が見え、次の料理が運ばれてきています。
 会席というと、現在は会席料理をさしますが、もとは何人かの人が会合する席のことで、その席で酒とともに出す料理を会席料理と呼んでいました。この絵の会席も何か趣味の集まりのように見えます。
 監修・著 松下幸子千葉大学名誉教授
>>松下教授プロフィール
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