鍋料理は、料理書への登場は少ないのですが、江戸時代にはかなり流行していたようで、『守貞謾稿』(1853)には多種類の鍋料理が見られます。
鰌(どじょう)鍋、骨抜き鰌鍋、なまず鍋、穴子鍋、猪肉や鹿肉と葱の鍋、鶏と葱の鍋、豚肉の琉球鍋などで、豚肉も嘉永(1848~54)のころからは公に売られていたとあります。 |
|
この中で骨抜き鰌鍋については詳しく書かれており、文政初め(1818)ごろに、江戸南伝馬町三丁目のうら店(だな)に住む万屋某が、鰌の骨首や臓腑を除いて鍋煮にして売ったのが始りで、その後天保初め(1830)ごろ、横山同朋町の柳川屋が売り出し流行したとあります。
作り方も、骨抜き鰌に笹がき牛蒡を加えて土鍋で煮て卵でとじるとあり、現在の柳川鍋と同じです。 |
|
また、池波正太郎の小説「仕掛人・梅安」「鬼平犯科帳」には鍋料理がよく登場します。
白魚(しらうお)鍋・白魚と豆腐の小鍋だて・軍鶏(しゃも)鍋・軍鶏のもつ鍋・猪(しし)鍋・蛤鍋・鰌鍋・大根鍋・大根とあさりの小鍋だて・大根と油揚げの鍋などで、小説とはいっても、江戸の鍋料理としてふさわしいものばかりです。 |
|
小鍋だては上の錦絵のように、1人か2人用の底の浅い鍋でする鍋料理です。
「大根とあさりの小鍋だて」では、土鍋にうす味の昆布だしを煮立たせ、千六本の大根とあさりの剥き身を入れ、煮えあがったら汁と共に小皿にとり、七味唐辛子を振って、梅安と彦次郎が2人で、ふうふういいながら食べています。 |
|
注) |
『守貞謾稿』の謾は、これまで『近世風俗志』(1908)により漫としましたが、岩波文庫『近世風俗志』(2002)の宇佐美氏の解説に従い謾と表記します。 |
|
|