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絵の中央の女性は遊女、左側の子供は禿(かむろ)で、遊廓での食事風景ですが、朱塗りの台の上には使用ずみの箸が3膳ほど見え、残り物の料理のようです。『魚づくし』ではこの絵の題を「たくさんの料理」としていますが、1枚の絵としては違和感があり、調べてみると、NO.195(平成9年12月)にとり上げた3枚続の「やつしげんじ雨夜のしな定め」の左の1枚でした。中央と右の2枚には柳亭種彦の『偐紫田舎源氏(にせむらさきいなかげんじ)』の主人公光氏(みつうじ)と遊女4人が火鉢を囲む光景が描かれています。
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以上のようにこの絵は、既にとり上げた3枚続の絵の中の1枚ですが、前回とは異なる視点で眺めてみました。
禿は遊女に使われる少女で、太夫・天神などの上位の遊女(花魁(おいらん))に仕える6、7歳から13、4歳までの少女をいいます。禿の衣裳と、その後の衣桁(えこう)に掛けられた衣裳が同じ模様ですが、天明(1781-1789)以降には、花魁と禿は同じ模様の衣裳を着たのだそうです。禿の衣裳の袖口に房が見えますが、『守貞謾稿』によると「宝永(1704-1711)以来、袖口の下を惣じて縫わず、袖口の所に総角(あげまき)のごときをつけたり。これ花街の禿といふ童女のみなり」とあります。総角は紐の結び方の名です。
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禿が仕える花魁は、既に食事をすませて火鉢の傍らにいるので、禿の視線はその方に向けられ、服装などから見て位の低いこの遊女は、1人で残りの料理で食事をしています。料理は台の物とよび、台屋(割烹店)から届けられたもので、客の残したものは遊女たちの口に入りました。日常の食事は上位の遊女は各自の部屋へ禿に運ばせて蝶足膳で、その他の遊女は集って猫足膳で、禿は飯台でと、階層による食事の差は大きかったようです。
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