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十二月の内 水無月 土用干
歌川豊国(三世)画 安政元年(1854)
財団法人 味の素食の文化センター所蔵
水無月
(みなづき)は6月で陰暦6月は現在の7月ごろにあたります。
土用干
(どようぼし)は夏の土用に衣類などを干したり風にあてたりして虫を払うことで、虫干(むしぼし)ともいいます。
絵の中央には、角切りにして盛った西瓜が見えます。
 江戸時代の代表的な農書『農業全書』には「西瓜は昔は日本になし。寛永の末ごろ(1640年ごろ)初めて其種子来り、其後やうやく諸州にひろまる」とありますが、天正7年(1579)に長崎に伝わったとも、14世紀には既にあったともいわれています。
 
 夏の食べ物として西瓜は江戸時代にも人気がありましたが、現在の西瓜のような甘さはなかったようです。『本朝食鑑』(1697)には、西瓜を半分に割り、果肉をえぐって砂糖を入れ、暫くおいてから食べる方法が書かれています。明治になってから現在の西瓜の親品種が導入され、改良を重ねて甘くておいしい西瓜が普及しました。
 江戸時代には西瓜は大都市の周辺で多く栽培され、江戸近郊では八王子、世田ヶ谷、北沢、亀戸、大森、羽田などが名産地としてあげられています。
 西瓜は産地から市場へは舟でも運んだらしく、坊主頭が大勢集った様子を「西瓜舟の着いたよう」と形容したり、「西瓜のみやげ あけずとも見える也」という川柳もあって、贈答品にも使われたようです。
 夏は食あたりの多い季節のためか、江戸時代の料理書には食禁(食い合わせ)の中に西瓜がよく登場します。「そば切を食し西瓜を食すれば其まま食傷(食あたり)す」「蕎麦に西瓜 苣(ちさ)は半日忌むべき也」「天ぷらに西瓜」などがありますが、現在の常識からすれば、過食しなければ支障はないようです。
 監修・著 松下幸子千葉大学名誉教授
>>松下教授プロフィール
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