この錦絵(味の素食の文化センター所蔵)は、文化14年(1817)に歌川豊国が画いた「中村座内外の図」の一部分を拡大したものです。
舞台では芝居が進行しているのに、観客の顔の向きはいろいろで、酒を飲む人、何か食べている人もいます。また料理の大皿をのせた膳を運ぶ人がいて、桝席には料理の皿も見えます。この絵は江戸三座の一つ、中村座の観客席の光景ですが、現在の歌舞伎座とは、ずい分様子が違います。
演劇関係の資料をしらべてみますと、明治44年(1911)に東京に開場した帝国劇場が、食堂や休憩室を設けて芝居茶屋をなくし、全館椅子席として観客席での飲食を禁止したことが、江戸時代からの観劇習慣の変化に、大きく影響したようです。地方による違いはあるようですが、東京では大正末ごろには、芝居茶屋はなくなったといいます。 |
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