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当世娘評判記
歌川豊国(三代)画 国立国会図書館所蔵
 
 上の絵には「当世娘評判記」とあって、料理や酒器を前にした3人の娘が描かれていますが、モデルの娘は誰なのでしょうか。
 絵師の三代歌川豊国(1786-1864)は、文化4年(1807)頃から幕末にかけて著名だった人ですから、当世(現代)とはその頃をさすものと思われます。
 
 『江戸の女』(鳶魚江戸文庫2・中公文庫)の中の「水茶屋の女」の項から、江戸の評判娘を探してみると、まず宝暦年間(1751-64)には、浅草のごふく茶屋の湊屋おろくがいます。明和年間(1764-72)には、明和の三美人として蔦屋(つたや)およし、笠森おせん、柳屋お藤があげられています。安永年間(1772-81)には桜川お仙、寛政(1789-1801)の二美人として難波屋おきた、高島屋ひさがあげられていますが、豊国の時代には有名な評判娘は見当たりません。
 料理の中で目をひくのは、中央手前の刺身の皿です。浅い大皿の上に、すだれをのせて刺身とつま(添え物)を盛っています。
 『守貞謾稿』(1853)後集巻の一にある刺身の項の中に「鯛・ひらめには辛味噌あるひはわさび醤油を用ひ、まぐろ・鰹等には大根おろしの醤油を好しとす。夏は血水底に溜まる故に、江戸にては、葭簀
(よしず)あるひは硝子簾(がらすすだれ)を敷きて、その上にさしみを盛る。江戸、刺身添へ物、三、四種を加ふ。糸切大根、同うど、生紫海苔、生防風、姫蓼(ひめたで)。粗なる物には、黄菊、うご(おごのり)、大根おろし等を専らとす」とあります。
 刺身は江戸後期と現在と、それ程変わっていないようです。
 監修・著 松下幸子千葉大学名誉教授
>>松下教授プロフィール
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