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新しい年の初めにあたり、七福神のおめでたい絵をとり上げました。絵の中央には千両箱を脇息(きょうそく)がわりにして、猪口を手にする大黒頭巾をかぶった商売繁盛の商家の主人がいます。右の方の丸清と家号の書かれた箱には、大福帳とそろばんが見えます。手前の女性は主人のために大皿から刺身をとり分けており、左側の深鉢には煮物が盛られています。赤い大きな蓋物の中身はわかりませんが、その向うの取っ手のついた器は、酒の燗をするちろりです。
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背景に描かれた海には白帆がいくつか見えて、七福神の乗った宝船を象徴しているようです。雲の上には七福神の酒宴が描かれていて、左から夷(恵比寿)、福禄寿、寿老人(じゅろうじん)の三神だけが見えます。
七福神は海の彼方から宝船に乗って来て、幸福をもたらす七神で、室町時代に始まる民間信仰です。七福神を乗せた宝船の絵は、夢占(ゆめうらない)に用いられ、江戸時代には正月2日の夜に、この絵を枕の下に敷いて寝ると、よい初夢が見られると信じられていました。また、この神々をまつる社寺を巡拝する七福神詣りの風習も生まれました。
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七福神のうち夷は唯一日本の神で、大国主神の子といわれ、生業を守り福利をもたらす神で、釣竿を持ち鯛を抱えています。大黒はもと印度の三宝を守り飲食を司る戦闘の神で、日本に入って富貴長寿の神とされ、大きな袋を背負い、打出の小槌を持ち米俵を踏まえています。毘沙門天はもと印度の仏法守護の神で、甲冑をつけた軍神で、知恵と勇気の守り神です。弁財天はもと印度の豊饒の神で、天女の姿で信仰され、琵琶を持っています。福禄寿は中国の福徳・財運・長寿の神で巻物を結びつけた杖を持っています。寿老人は福禄寿と同じ神ともいわれ長寿の神です。布袋は中国の後梁に実在した布袋和尚で無病息災の神です。
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