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10月30日、小田原宿での食事
白飯、つみれ汁、刺身(煎酒と酢みそ添え)、蒲鉾、梅干、ういろう
 東海道五十三次の旅は先を急ぎ、第3回は小田原です。献立は「白飯、つみれ汁(鰯)、刺身(さより・ひらめ)、蒲鉾、梅干、菓子はういろう」です。刺身には煎酒と酢みその2種類の調味料を添えたので器の数が多くなり、混雑した配置になりました。
 つみれは摘入
(つみいれ)を略したもので、魚のすり身におろしたやまのいもや卵白などをすり混ぜ、箸などでつまんで汁に入れて煮るものです。
 煎酒は室町末頃からある調味料で、清酒に削り鰹節、梅干、たまり少量を入れて煮詰めて漉して作るものです。『料理物語』(1643)には「煎酒はかつほ一升に梅干十五二十入れ、古酒二升水ちとたまり少入れ、一升にせんじこしさましてよし」とありますが、料理書によって材料の分量や加熱時間に差があります。江戸後期に醤油が普及するまでは、白身魚の刺身には煎酒や酢みそなどが用いられました。今回試食した酢みその味がよく、厨房の方に教えていただいたところでは、みそと砂糖に白ごま(ペースト状)を少量まぜて、酢を少しずつ入れながらのばすということでした。
 菓子の外郎(ういろう)は現在も小田原の名物ですが薬の外郎もあり、『東海道中膝栗毛』に「ういろうを餅かとうまくだまされてこは薬じゃと苦いかほする」と、北八がだまされる話があります。外郎は中国の官名で、室町時代に日本に帰化した元朝の礼部員外郎であった陳氏の子孫が外郎を家名とし、代々医薬を業として、透頂香(とうちんこう)俗称外郎とよぶ、たん切りや口臭を消す薬を製造販売していました。菓子の外郎は薬の外郎と色が似ているところからの命名といいます。陳氏の子孫が戦国時代に北条早雲に京都から招かれて小田原に住んだので、外郎餅は小田原の名物になったといわれています。
 監修・著 松下幸子千葉大学名誉教授
>>松下教授プロフィール
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