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『本朝食鑑』(1697)には、(えび)とあり、俗に海老と書くとして、伊勢・車・芝などをあげています。海老は甲殻類十脚目長尾亜目の節足動物の総称なので種類が多く、日本だけでも400種類といわれています。
『日本山海名産図会』(1799)には、伊勢海老の名は伊勢の海で多くとれて京都に送られたから、別名鎌倉海老ともいうのは、鎌倉の海でとれて江戸に送られたため、また志摩の海でとれて尾張に送られたものは志摩海老というとあります。
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伊勢海老は甲殻がかたく、よろいかぶとを着けた武将のように立派で、茹でると赤くなって美しいので、昔から正月や祝儀に用いられています。また海老の文字は、背が丸くひげが長い姿が老人に似ているところから海の老人を意味し、長寿をあらわしているので、めでたいことに用いられるともいいます。
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式亭三馬(しきていさんば)の『日本永代蔵』(1688)の中に「伊勢海老の高買」という話があります。ある年の暮に、江戸では伊勢海老と橙が品切れになり、途方もない高値がつき、大坂でも同様に高値でしたが、正月の祝い物なので仕方なく無理をして買っていました。ところが堺のむだ遣いをしない男が伊勢海老の代りに車海老、橙の代りに九年母(くねんぼ)を飾ってすませたので、堺の人々はみなそれを見習ったという話で、伊勢海老が正月の必需品だったことがわかります。
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伊勢海老の江戸時代からの料理で代表的なものに、活きづくりの「舟盛(ふなもり)」があります。腹の方から身をとり出し、尾頭をそらせて舟の形にした殻を台に打ちつけ、刺身に切った身を殻の中に盛るものです。また「具足煮(ぐそくに)」は、伊勢海老を殻をつけたまま輪切りにして煮たもので、殻が具足(よろいかぶとの事)に似ているところからの名です。
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