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鯉の絵に添えられた「末つひに雲ゐの竜となりぬべし川瀬をのぼる鯉の勢ひ」の狂歌は、中国の故事に「鯉は百歳になると大河をさかのぼり、さらに竜門の滝を登って竜に化する」とあるのをさしています。
竜門は中国の黄河中流の急流で、魚が登り切れば竜になるといわれ、竜門の滝登りは人の出世にたとえられ、登竜門ともいいます。
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鯉はいまでも中国では諸魚の長とされていますが、日本では江戸時代には、魚類の第一位は鯛でした。鯉は淡水魚の中では第一位で、現在よりも多様な料理法がありました。
『料理物語』(1643)には、鯉に適した料理法として「さしみ なます 汁 浜やき すし こごり 小鳥焼 すい物」をあげています。このうち「こごり」は凝魚と書き、魚を煮て冷やし、煮汁ごと固まらせたもので、煮こごりともいいます。
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『料理物語』には、珍しい鯉の料理として、汁の部に「鯉のゐいり汁」があります。ゐいり汁とは胃入り汁のことかと思っていましがた、調べてみると鯉には胃がありません。食道は腸に続いており、ゐとは胆嚢のことでした。そういえば熊の胆(い)の例もあります。鯉の胆入り汁の作り方には、苦味が強すぎないように加減する方法が書いてありますが、当時の人々は苦味も楽しんでいたようです。
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また、鱠の部には「鯉の子付けなます」があります。鯉を三枚におろして細作りにし、煎った鯉の子(卵)をまぶしつけた鱠ですが、調味の方法が凝っています。
細作りにして子をまぶしつけた鯉の身の半分には、熱くした煎酒酢(煎酒に酢を加えたもの)をかけ、半分には冷やしたわさび酢をかけ、両方をかきまぜて供するとあります。想像してみても味と温度が複雑で、味わってみたくなる料理です。
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