バックナンバーへ
戻る
去る二月十五日、歌舞伎座の「お稲荷さん」で、二の午祭りが行われました。例年、初午祭りとして二月最初の午の日に行われるこのお祭り、今年は節分と重なったため、二の午の運びとなりました。

稲荷社を紅白幕でしつらえて、祭壇にはお供え物と準備は万端。朝いちばんで歌舞伎座稲荷の御守(おもり)・鉄砲洲神社の神主さんにお越しいただき、今年一年の無事を祈願してまずはお祓いです。

最初の幕間に当たる正午過ぎには、当日ご観劇のお客さまが続々とご参拝に。お参りがお済みになった方には、紅白白玉が入った歌舞伎座特製のお汁粉とお神酒の振る舞いで、従業員が心ばかりのおもてなし。中にはこれを毎年楽しみにして下さっているお客さまもいらっしゃるとか。
床机に緋毛氈、後ろには二月の風物・地口行灯も見えます。普段は静かなお社もこの日ばかりは大賑わい。お天気にも恵まれ昼下がりには行列まで出来、お祭りは賑賑しく六時過ぎまで続いたのでした。

さて、この初午祭り。八世紀初め二月の初午の日、京都伏見の稲荷大社に祭神が降臨したと伝えられたことに由来します。現在の祭りはそれが各地の稲荷信仰と結びついたもので、五穀豊穣・商売繁盛・子孫繁栄とご利益もさまざま。
当時の暦は、太陰暦より更に古い中国の宣明暦(せんみょうれき)でしたから、初午は幾度もの暦替えを乗り越え、なお根強く残る日本の風物詩といえるでしょう。

この初午や節分のように、古くからの風習を今に伝える伝統行事が、歌舞伎座にはいくつも残されています。ご観劇の折にそういった日本の情緒にふれることも、楽しみの一つに加えてみてはいかがでしょうか。

 

掲載情報の著作権は歌舞伎座に帰属しますので、無断転用を禁止します。
Copyright(C) 2005 株式会社歌舞伎座