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歌舞伎座の大屋根
聞くところによると、近頃の“白浪”(盗賊)は、変装や七つ道具どころかハイテク武装で、時によっては集団化、並大抵の戸締りでは油断もスキもならず何かと物騒です。片や、守る側のセキュリティーもシステム化。家主が寝ていても、留守していても、いざというときには、“助っ人”まで駈けつけるシステムもあるようです。
こういう時代では、あの“弁天小僧”や“鼠小僧”もやたらと他人様の屋根の上で大立ち回りすることはできないでしょうが、そこは一筋縄ではいかない連中のこと、まんまと警戒網を潜り抜けるかもしれません。でも、写真のような「鬼面」に出くわしたら、夜陰に浮かぶあまりの形相にきっとびっくりする事と思います。
もちろんこの大屋根は鎌倉極楽寺でも大江戸のお武家屋敷でもありません。歌舞伎座の大屋根です。以前にも鬼瓦を紹介したことがありましたが、この写真のものが、当座随一おっかない鬼面付数珠掛荒目流の鬼瓦です。世は移れし東京の、歌舞伎の殿堂花舞台、西袖棟は切妻の、大棟端に鎮座して、安穏願って睨みを利かす、自慢の現役セキュリティー。
“弁天小僧”も“鼠小僧”も、今ではこの屋根の下で大活躍をしています。
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