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縦約6.5cm、横約8.5cmのとても小さな絵馬です。
 これは何となく絵馬であることは確認できますが、中央に描かれている絵の正体はというと、近代随一の二枚目役者であったあの十五世市村羽左衛門によって描かれたということ以外に正直手がかりはありません。果たしてこの絵馬には十五世市村羽左衛門のどのような想いが込められているのでしょう。
 
 しっかりと絡み合った大小二つの生命体・・・。永遠に途切れることなく環を結び力強くうねるその様は、親から子へそして子から孫へと受け継がれてゆく歌舞伎の技と名跡・・・断絶することの許されぬ継承の重み・・・。歌舞伎役者ならではの”永劫の念”がこの絵馬には込められているのでは・・・とそんな風に私には感じられます。
 
 ところで、この小さな小さな絵馬は歌舞伎座の場内にて展示されているものですが、その小ささゆえ目に留まることなく見過ごされている方も多いのではないでしょうか?手がかりは○○階受付前です。ぜひ一度、皆さんの目で直にご覧になって発想を自由に膨らましてみてはいかがでしょう。もしかしたら、今は亡き十五世市村羽左衛門の記憶の断片に少しでも触れることができるかもしれませんよ・・・。
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