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蛍光灯の仄かな光に照らされた、コンクリートの細い階段。
その壁面に、クラシカルな赤いレンガ造りがのぞきます。
舞台裏は細い通路が入り組んだ地下迷宮。
奈落から廻り舞台を抜けて、大道具製作場へと登る階段の脇にのぞくこのレンガは、
なんと大正時代のものなんです。
 
明治22年に開場以来、3度の焼失と復興を繰り返してきた歌舞伎座。
その2度目、大正12年の関東大震災後の復興で使われたレンガの一部が、
現在もひっそりと身をひそめて存在しているのです。
 
かすかに聞こえる舞台上の音と、舞台裏の喧騒を、
80年近くも聞いてきた赤レンガ。
今日も、この大正生まれのレンガの横を、
大道具さんの軽やかな雪駄が駆け抜けてゆきます。
現在の歌舞伎座は、
さらにその後、東京大空襲での焼失を経て
昭和26年に建てられた「新しい」姿なんですね。
大正14年開場の歌舞伎座も
戦争でこの様になりました。
この時残ったレンガの話です。
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