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毎年11月中旬には、火の安全を祈願して“汽缶祭”と呼ばれる祭事が開催されます。汽缶室のボイラー前には祭壇が築かれ、神主さんによるお祓いを行います。もともとは、“ふいご祭り”と呼ばれる古来からの風習が起源だそうです

 歌舞伎座の舞台下には奈落と呼ばれる地下部分があります。この奈落には通常汽缶室(現在管理部)と呼ばれる部署があり、主に施設のメンテナンスと管理維持を掌っています。
 場内の照明や空調・冷暖房はもとより、あらゆる場内の設備をこの汽缶室のスタッフが管理維持していますが、それだけでなく、廻り舞台や宙乗り、あるいは舞台のドライアイスなどの仕掛け装置も、この部署の範疇だという事には驚かされました。
 さて、歌舞伎座は誕生以来震災・戦災を含め三度の火災に遭遇しています。汽缶室の使命は厳重な防火設備の維持はもとよりの事ですが、まず スタッフ全員が『我々にとってなによりも恐ろしいのは火事!』と、日ごろから“火に注意する”意識を常に維持することが、あらゆる面で徹底されています。
 汽缶室奥の神棚の下には、大正10年10月30日午前8時40分に発生した実際の火災の写真(原因は漏電と発表される)が、戒めの言葉と共に壁にかけられています。今年定年を迎えるスタッフの方によると、この額縁写真は、入社したときにはすでに今と同じ場所に貼られていたという事ですから、火災に対していかに以前から注意が払われていたかが偲ばれます。
写真と文章・アジャスト田中伸明
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