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左側が仮花道、右側奥に本花道が見えます。
今月の歌舞伎座の舞台には花道が二つ。下手側(舞台向かって左)に通常ある花道を本花道と呼ぶのに対し、芝居の演出に応じて上手側に設置されるものを「仮花道」と呼んでいます。
歌舞伎好きのお客様は、仮花道が設置されていると、どの芝居のどの場面で使用されるのか、すぐにお判りになり、あるいは、「両花道だから観に行こう。」と切符を求めて下さるお客様もおられます。
 
今月、昼の部では、車引の桜丸・芝居前の女伊達が仮花道からの出、そして夜の部の野田版研辰の討たれでは、いつ仮花道から役者が登場するのかとワクワク心が躍り、スピード感さえも味わえました。
 
仮花道と本花道、両花道を使用することで劇空間の広がりがより一層増し、客席と一体感もより強まります。一階席前方のお客様は左を観たり、右を観たりと首を動かすのに忙しいかと思われますが、それも両花道を使う芝居の醍醐味。この仮花道は、江戸時代の芝居小屋で、小屋のスタッフや観客の歩く通路から発展して今日に至っており、先人の斬新な舞台演出です。(現在でも香川の金毘羅・金丸座などでその様式を見る事ができます。)
勿論、これからの新しい芝居づくりにも、「仮花道」は歌舞伎にとって大切な舞台機構です。
そして、花道が二本ということで、あのチャリンと心地良い音を奏でる揚幕を開閉する係“揚幕さん”も、とうぜん倍の人数で担当します。
今月から、仮花道で“揚幕さん”を初めて担当した新人さんがいます。『勘三郎さんの襲名での揚幕を任せられ感動、役者さんの出の緊張感を肌で感じています。』
役者と揚幕さん、まさに阿吽の呼吸が伝わってきます。
左の写真は、仮花道の七三(花道で演技する際の定位置)から本花道を役者さんの気分で臨んでみました。台詞の掛け合いが聞こえて来ませんか?

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